「出会い」レンブラント  1975
 
 
正面の階段を昇った中央の部屋で待っていた作品に僕は思わず息を呑んだ。一点の自画像が寂しくそれでいて厳しく僕を見つめていたからである。それはまさしく晩年のレンブラントだった。
ヨーロッパの旅も終わりに近づき最後の訪問国となったイギリスのロンドンにあるナショナルギャラリーでの出会いだった。その作品を目にしたとき、直感的にたとえようのない寂しさを感じた。レンブラントの目の中にそれが強く表れていて、じっと眺めてるうちに完全にその世界に引き込まれていた。 これからの自分の道を考えたときレンブラントの自画像に含まれているあの寂しさは宿命的なものに思えてならなかった。そして、僕もそうありたいと願った。芸術家として人間として自分の真の姿を見極めようと懸命に努力し追求したが未だ発見しえぬ 侘びしさを見たような気がした。それでも、自分を直視して正直にさらけ出す勇気 には感動した。
これはたしかレンブラント最後の自画像のはずだ。