『出会い』エゴン・シーレ 1975
 
 

夜行列車の疲れと思いリュックのせいでゆっくり慎重にミュンヘン駅のホームに降り立ったときのことである。
異様に鋭い目つきで僕を見つめるたくさんの同じ顔に取り囲まれていた。予期せぬ 強烈な出来事に身のすくむ思いがした。そのポスターの人物こそエゴン・シーレである。僕は素晴らしいタイミングでミュンヘンに来た幸運を心から喜んだ。ポスターでこれほど強い衝撃を受けたのは始めてのことだ。さっそくリュックをコインロッカーに入れ慌てるように美術館へ向った。息苦しいばかりのむき出しの感情と精神から生まれた線と色彩 が人間に対する鋭く激しい洞察と思考を感じさせた。あの激しさをよく持続できるものと思っていたら、あとで28才の若さで この世を去ったことを知った。僕は勝手に自殺でないかと推測したがそうではなかった。しかし、そう思わせるほどギリギリで生きてる目をしていた。
ミュンヘン駅での顔は今も僕のなかで鮮明に生き続けている。