札幌の美術作家、中橋修さんは絵画から出発し、21世紀に入ってからは立体造形へと制作の幅を広げている。

白と黒を基調にしたシンプルな造形をインスタレーション的に展開した個展が多かったが、今回は、独立した小さめの作品を並べている。といっても、いわゆる彫刻とはちがう。一見すると、発注して作らせたもののようにも見えるほどに精密にできているが、そこは手作業だけに、等間隔のスリットもわずかなずれがある。いわゆるミニマルアートにはない味だと思う。

会期中は作家が会場におられるので、いろいろ聞いたほうが楽しい。ざっと見ただけでは気づかないこともあるからだ。たとえば、この「はしご」状の、縦に細長い作品。昨年の「はしご展」出品作のミニチュアとも思えるが、見る角度によって、向こうの壁が見えたり見えなかったり・・・。

つぎの作品は、会場のつきあたりに置いてあるが、横縞のつくるモアレが、作品からの距離によって微妙に変化する。とりたててめずらしい現象でもないが、わざわざ作品化するのはあまりないかもしれない。いわば、オプアートの立体版といえなくもない。

こちらは、会場の左側(北側)のスペースにある作品群。空中へと続く階段は、ブランクーシの無限柱を連想させる。中央の黒い作品は、文章にしたがって鑑賞者がふたをずらすというもの。「同じ文章でも人によって読み取り方がぜんぜんちがうのがおもしろい。そこに着目すればコンセプチャルアートになるよ」と中橋さん。

正方形の作品。中央部分の突起あるいは陥没は、塩ビ板をろうそくの炎で熱して変形させたもの。「ひとつひとつは同じに見えて、じつはすべて違っているんです」

作者の意図は、作品だけではなく、人間存在のありかたにまで向っているのかもしれない。