昨年オープンしたギャラリー門馬アネックスは、そのつくりからして、作家に「この空間にマッチした作品をつくってやろう」という気を起こさせるようです。幅1.5ないし1.6メートルほどの細長い、純白に塗られた空間。途中までは左側に窓があり、午前中は直射日光がさしこみます。そしてつきあたりにもガラスのドアがあり、そこは、緑の中のテラスになっているのです。

中橋さんは、白い空間に、白と透明なアクリル板による立体作品を並べました。やさしい、乳白色のひかりが空間全体をみたしています。まりにも合っているので、そのまますっと通 り過ぎてしまう人もいるそうです。いずれも、正方形か長方形の正面を持つ直方体。影がアンモナイトのような作品。全体を同じ大きさの30の「部屋」に仕切り、細いガラス棒と球をひとつずつ配したもの。棒は、それぞれの部屋の床から天井までつらぬ き、球は床に転がっているのですが、場所が微妙にことなるので、おもしろいリズムをうんでいます。窓側のちょうど中央に1.5@ほどの細いスリットを入れただけのシンプルな作品も。バーネットニューマンの絵のZIPをまん中に持って来たような作品です。

このほかにも、白いフィルムケースを54個(作者の年の数)だけ箱の中に陳列したものなどがありました。中橋さんのアプローチは、どこかミニマルアート的なところがあるのですが、たとえばドナルド・ジャッドの作品がひとことで言って「取り付く島もない」のにくらべると、どこか人間的なあたたかみを感じさせます。また、どちらも絵画から出発しているのですが、1点1点が自立したジャッドに対し、サイトスペシフィックな(発表空間に合致した)、空間全体に配慮しています。ただし、それぞれは相対的に独立仕手入るので、インスタレーションになってるわけではありません。

 

北海道美術ネット主宰  梁井 朗